地下室のある注文住宅をつくる費用は?地下室のメリットデメリットもご紹介

家を建てる際には、土地に対しての建ぺい率、容積率、高さ制限などの建築条件が設けられています。

これらの制限により、限られた空間で注文住宅を作らなければならず希望とは違った家になってしまう可能性があります。しかし地下室を作ることによりと床面積を広くし、土地を有効活用でき、地下室にしか作れない夢のある空間を作ることができます

では、実際に注文住宅で地下室を設けるとどれくらいの費用が必要なのか、メリットデメリットはどんなものがあるのかなどを詳しく見ていきましょう。

家に地下室を設ける費用

住まいに地下室をつくることに憧れを抱いている方も少なくないでしょう。しかし、地下室をつくるとなると通常の住宅の建築工程にはない工事を行う必要があるので建築費用が高くなります。

地下室建築には、土を掘って運ぶ費用や地盤改良や浸水対策など対策をするための費用がかかります。一般的に、通常の面積と比べて2倍以上の費用が必要になるといわれています。面積や仕様によっても変動しますが、約600万円~1000万円以上することも珍しくありません。

とはいえ地下室のある生活にはさまざまなメリットがあり、使い方次第で毎日の生活をとても充実させられるでしょう。地下室建築にかかる費用を以下にまとめたので、予算と相談しながら地下室のある注文住宅づくりを検討してください。

用途 費用相場
調査にかかる費用 80万円~160万円
土を掘って運ぶ費用 350万円~400万円
地盤改良にかかる費用 100万円~300万円
浸水対策にかかる費用 600万円~900万円
結露対策にかかる費用 15万円~70万円

また、費用と同様に地下室の建築にかかる工期も通常より行う工事が多いため長い期間を要します。おおよそ2ヶ月以上は長くなると考えて家づくりのスケジュールを立てましょう。

地下室の活用方法

地下室は住宅の下に位置する空間であり、さまざまな活用方法があります。 自分自身のライフスタイルやニーズに合わせてカスタマイズすることができる地下室は柔軟なスペースであり、創造的なアイデア次第でいろいろな使い方が可能です。

ここでは地下室の活用方法の一例を紹介します。以下を参考に、自分自身の理想の地下室を考えてみてください。理想の空間が住まいにあれば、毎日の暮らしがより一層楽しくなるでしょう。

活用例①:収納スペース

地下室は収納スペースや物置きスペースとして活用することができます。季節ごとの衣類や家具は、シーズンオフだと置き場所に困ってしまうこともしばしば。地下室にワンフロア分の収納スペースを確保しておけば、しっかりと整理整頓できるでしょう。

地下室を収納スペースとして活用する場合、趣味やスポーツ用品の保管にも利用できます。特にキャンプなどのアウトドアな趣味を持っている場合かさばる用具が多く、地下室ワンフロアが収納スペースである恩恵を受けるのではないでしょうか。

活用例②:趣味スペース

地下室をホビースペースとして活用することもできます。たとえば楽器演奏が好きな方なら音楽スタジオを、映画鑑賞が趣味の方はホームシアターを、筋トレが日課の方はホームジムを、ゲーム実況をしている方なら専用のゲームルームを。地下室は防音効果が高いので、周囲を気にせず趣味に没頭できるでしょう。

完全フルオーダーの注文住宅なら、地上フロアに趣味部屋を設けるのも容易いです。しかしセミオーダーの注文住宅だと、地上に趣味部屋を確保できないこともあるでしょう。そんな時こそ地下室を趣味スペースとして活用することをおすすめします。

活用例③:オフィスやワークスペース

地下室を自宅のオフィスやワークスペースとして活用するのもおすすめです。地下室は遮音性が高いので雑音が耳に入りにくく、仕事や勉強に集中できる静かな環境を確保できます。

昨今の社会情勢で、自宅からリモートワークをするビジネスパーソンも増加傾向にあります。自宅だとリモート会議をする際に背景を気にしたり、子供の声が入らないよう配慮したり、気にすることがたくさんあるでしょう。地下室を仕事専用のスペースにしておけば、そういった心配事は気にならなくなります。

活用例④:リビングスペースの拡張

リビングスペースをなるべく広く確保したい場合、地下室にリビングスペースを拡張させるのも良いでしょう。リビングルームやファミリールームを地下室とつなげることで、家族でゆったりとリラックスする空間や、娯楽などを楽しんで家族団らんをするスペースを広々と確保できます。

都心部などでじゅうぶんな敷地を確保しにくい場所であれば、子供が遊べるようなガーデンスペースを確保するのも難しいはず。住まいの空間をタテに広げて、地下に遊戯スペースを設けるのも良いのではないでしょうか。

活用例⑤:ワインセラー

地下室の建築する際は、建築基準法で調湿と換気を行う設備を導入することが義務付けられています。そのため地上の部屋よりも地下室は温度や湿度が安定しやすく、ワインセラーとして利用することも可能です。

ワインの保管や熟成を楽しむための専用スペースとするのも良いですし、冷暗所で保管するような食品の置き場として活用するのも良いでしょう。温度や湿度の安定しやすい地下室での保管ならエアコンの稼働も少なくできるので、光熱費も削減できます。

家に地下室があるメリット

メリット①:土地を有効活用できる

土地には建築条件があり、限られた面積で家を建てなければなりません。しかし、地下室では規定に該当すれば延床面積の1/3までが容積率算定の際に緩和され容積率に算入されないため、地下のない家よりも広い空間を作ることが出来ます

居住空間をタテに広げて地下の空間も有効に活用することで、収納スペースや趣味の部屋、家族の遊び場など、家の中に追加のスペースを作ることが可能。狭い土地では特に活用したいメリットでしょう。

メリット②:遮音性が高い

地下室は地下に位置することで、外部からの騒音を軽減する効果が期待できます。周囲がコンクリートに囲まれていることによって遮音性が高いので、音を気にせず大音量でシアタールームで映画を見たり、音楽スタジオで楽器の練習したりすることが可能です。

さらに、衝撃や振動も伝わらないので子どもの遊び場や、トレーニングジムとしても活用できます。静かな空間なため仕事部屋や読書部屋、さらには寝室としても用途があり、活用方法はさまざま。あなたの家族だけのプライベート空間を演出できるでしょう。

メリット③:温度が安定している

地下にあるため、地下室は自然の地温を利用して室内を冷暖房する効果があります。これにより、季節による温度の変化が少なく、エネルギー効率の高い住宅を実現できる可能性があります。

地下に位置する地下室は外気温からの影響を受けにくいです。1年を通して温度がほぼ一定のため、ワインセラーや食品貯蔵庫としても活用できるでしょう。

メリット④:地震などの災害に強い

建物は高いほど地震の影響を受けやすいですが、地下室は地盤の深い位置で支えられているため地震の揺れが軽減されます。日本は地震災害が発生しやすい国なので、地震に強いスペースがある住まいなら安心感が格別でしょう。

また、地上よりも地下の方が台風や竜巻といった自然災害にも影響を受けにくいです。万が一台風や地震、洪水など自然災害が発生してしまった時に避難スペースとして活用することもできるでしょう。普段から防災グッズを地下室に備えておくのも良いかもしれません。

家に地下室があるデメリット

デメリット①:湿気が溜まりやすい

地下室は湿気やカビの発生リスクが高いというデメリットがあります。特に夏場は地下室の外は高温多湿なのに地下室内は涼しく、温度差が生じて結露が発生しやすくなってしまうので注意しておきましょう。

また、地下室はコンクリートで施工する場合がほとんどですが、コンクリートから完全に水分が抜けるまでに時間がかかってしまいます。そのため湿気がたまりやすくなるので、換気や除湿機などのさまざまな対策が必要になるでしょう。

デメリット②:浸水する可能性がある

地下室は台風や竜巻などの自然災害を影響を受けにくいというメリットがありますが、驚異的な台風や豪雨が起こった時に下水道管からの逆流や外からの雨水の流れ込みにより、浸水被害が発生する可能性もゼロではないです。

自然の力は時に私たちの想像を絶するほどの猛威を振るいます。地下室は絶対に安全だとは考えず、念には念を入れでポンプ施設(逆流防止弁付)を設置や、土のうや水のうを積み雨水の侵入を防ぐなど浸水対策を行っておきましょう

デメリット③:建築費用が高くなる

地下室を作るためには通常の基礎工事とは違い、ボーリング調査、防水工事など、従来の住宅づくりでは行わない様々な工事が必要になってきます。また大量のコンクリートを要したり、敷地を掘るために重機を使ったり、土を処分したりと、通常の工事とは異なるため工程が増えるためコストが多くかかるでしょう。

地下室は建設だけでなく、維持にも費用がかかります。メンテナンス費用のことも考慮しなければならないので、コストパフォーマンス重視で家づくりをしたい方は、地下室付きの注文住宅は少々厳しいかもしれません。しかし、他で費用を削減して地下室にまわすという手段もあるので、高いからとすぐ諦めるのはもったいないです。

地下室がある家の注意点

注意点①:土地の調査を入念にする

地下室を建設する前に、土地の調査を行うことが重要です。土地の地盤の状態を調べる”地盤調査”、地下水の流れや水位の情報を把握する”地下水調査”、周辺の自然環境への配慮するための”周辺環境の調査”、地方自治体の法規制や建築基準法の規定を遵守するための”法規定の確認”、地下室が洪水や台風の影響を受けないための”気象条件の調査”などを実施しましょう。

これらの土地の調査をじゅうぶんに行うことで、地下室の建設において安定性や耐震性、防水性などの面で問題を予防し、安全かつ快適な地下室を実現することができます。建築プロフェッショナルや専門家の助言を得ることも推奨されます。

注意点②;採光を確保

地下室は建物の地下に位置するため、自然光の入射が限られることが一般的です。そのため、斜光(側面からの光)を有効に利用することが求められます。窓の位置や大きさ、形状を工夫して斜光を効果的に取り入れるように設計しましょう。

窓のタイプも斜光の取り込みに影響します。例えば、大きな開口部を持つ採光窓や、壁面全体を窓にするスリット窓など、斜光を効果的に取り込むための窓のタイプを選択することが重要です。間接照明やダウンライトなどを適切に配置し、斜光の不足を補うことも意識しましょう。

注意点③:湿気対策

地下室は一般的に湿気が溜まりやすい環境であるため、湿気対策が重要になります。地下室の壁や床、天井には防水施工を施しましょう。また、換気扇や換気口などを設置することで湿気を排出し、新鮮な空気を取り入れて湿気を抑えることもできます。

断熱材を適切に施工することで、地下室の内部と外部の温度差を緩和。そうすると、結露や湿気の発生を抑えることができます。床や壁、天井に断熱材を使用し、適切に断熱対策を行いましょう。エアコンや加湿器、除湿器を活用して地下室の温度や湿度を適切に管理するように意識してください。

注意点④:避難経路の確保をする

地下室への経路は一般的には室内階段だけです。しかしこれだけでは火事や地震、浸水の際に避難経路がなくなってしまうこともあり危険です。地下室に避難経路を確保することは、家族の安全を守るためにも非常に重要でしょう。

常に脱出可能な出口を確保しておいたり、避難経路を明るく照らせるような照明を用意したり、避難経路を明確に案内する表示や標識を設置したりなど、万が一の際に避難できるよう日頃から備えておきましょう。

半地下室と全地下室の違い

半地下室とは?

半地下室とは、建物の一部が地上に比べて一段低い位置にある部屋やスペースのことです。地下階の3分の1以上が地中に埋まっています。住宅や建築物の地下の一部に、もう一部屋欲しい時やスペースを確保したい時に使用されることが多いです。

半地下室の特徴としては、建設費が全地下室に比べて低いことや、地下空間を活用して多目的なスペースを作ることができることが挙げられます。全地下室と同様に湿気の発生や断熱・換気の対策が必要でしょう。

全地下室とは?

全地下室とは、建物の地下に完全に位置する、地下階全体が活用されているスペースのことを指します。 つまり、建物の地下にあるすべての階が地下室として利用されている形態です。

全地下室の特徴としては、建物の地下全体を活用できるため広いスペースを確保できることがあります。また、建物の地上階に比べて日照や通風の影響を受けにくいこともあります。追加の同居スペースや収納スペースをなど、さまざまな活用ができる点が魅力的です。

半地下室と全地下室の比較

半地下室と全地下室は、部屋全体が地下に埋まっているかどうか以外にもさまざまな違いが存在します。

半地下のメリットとしては、「全地下よりもコストを抑えられる」「高低差のある敷地をうまく活用できる」「採光や風通しが全地下よりは入ってくる」という点があります。一方全地下のは、「広々としたスペースの確保が可能」「周囲からの視線を遮るプライベート空間」「断熱性や遮音性、室温の安定性が優れている」というメリットを有します。

いずれの場合も地上フロアのみの住まいを建築するよりは費用を要しますし、外の温度と地下室の温度差で湿気が生じやすいという課題を抱えていますが、かろうじて全地下よりは採光や通風を得られる半地下のほうが結露やカビの発生を防げるでしょう。

半地下室と全地下室の選択は、用途や予算、日照条件などの様々な要素を考慮して行うべきであり、建築家や設計士とのじゅうぶんな相談や計画が必要でしょう。

半地下の良いところ 全地下の良いところ
  • 全地下と比べて建築費用が安い
  • 高低差のある敷地を有効活用できる
  • 全地下よりは採光や通風を得られる
  • 広々とした空間を確保できる
  • しっかりとプライバシーを守れる
  • 断熱性や遮音性、室温の安定性が良好

地下室は後から増築できる?

結論から言うと、地下室を後から増築することは条件さえ満たしていれば可能です。ただし綿密な計画・設計や土地の調査が必要になります。

地下室の後からの増築は、並列の建物の構造に及ぼす可能性があります。耐震性や建物の構造を詳細に調べあげ、地下室増築の際には専門の建築設計士や構造設計士のアドバイスを受けることが重要です。また、地下室は地盤に深く関連しているため、後からの増築は地盤の状況に影響を与える可能性もあります。

今ある建物の下に地下室を増築する場合は、接合の地下室に適した施工が必要です。 接合の地下室の形状や高さに合わせて、新たな壁や床を作成しなければいけません。地下室の通気や止水などの施工にもじゅうぶんに注意しておきましょう。

地下室を増築できるかどうかは「現地調査」をしてみない限り判断できないので、リフォームを検討しているようであればまずはじめに業者に相談してみてください。

地下室を後から増築する場合は費用相場

一般的に地下室の増築にかかる費用は、1坪あたり80~130万円程度と言われています。

地下室増築の際には複数の見積もりを比較し、じゅうぶんな予算を確保することが重要です。 また、住んでいる地方や地域によっても費用が異なってきます。あなたが住んでいる土地のの建築市場の相場を、参考までに検索してみましょう。

現在住んでいる家の下に新しく地下室を増築するなら、土地の状態をはじめとしたさまざまな条件が建築費用に関わってきます。たとえば、増築の規模や面積によって費用は変化。部屋の広さや形状、壁の数や高さ、床の仕上げ次第で工事の難易度が変わるからです。また、並列の構造に合わせた補強や改修が必要になることもあります。

地盤の状況によって、地盤の補強や強化が必要になる場合も。地盤調査の結果に基づいて地盤対策をするとなると、さらに費用が跳ね上がるでしょう。1坪あたり80~130万円程度はあくまで目安とし、価格にこだわりすぎず土地調査をじゅうぶんに行って安全に地下室を増築しましょう。

地下室に関するよくある質問

地下室を建設するのに必要な費用は?
面積や仕様によっても変動しますが、約600万円~1000万円以上は必要になると考えておくと良いでしょう。
地下室の使い道はどうしたらいい?
収納スペースや趣味部屋、ホームシアターやワインセラーなど幅広い活用方法が存在します。あなたのライフスタイルにあう使い道を探し、特別な空間を演出すると良いでしょう。
地下室のメリットデメリットは?
地下室をつくるメリットは、土地をタテに有効活用することで居住空間を広くできるところです。遮音性が高く温度が安定するというメリットもあります。デメリットは、通常の住宅よりも費用がかさむところでしょう。湿気がたまりやすいので除湿器を導入するなどの対策が必要です。
地下室をつくる時の注意点は何?
土地の調査をじゅうぶんにしておくことです。しっかりと調べることで耐震性や防水性などの問題を建築段階で予防できます。
あとから地下室を増築することはできる?
土地の調査をじゅうぶんに行った上で、条件を満たしていれば地下室の増築が可能です。

まとめ

地下室には夢があります

周りを気にせず音を出せる趣味の部屋、走り回れる子どもの遊び場、静かな寝室などの地下室にしか作れない空間を作ることができるためとても魅力的です。

湿気や採光など懸念するところはありますが対策をすれば解決できます。コストがかかるというデメリットもありますが、夢のある空間を作るためにも予算を考慮して考えてみてはいかがでしょうか。