リードナーチャリングは、獲得した顧客の購入意欲を高め、受注に結びつけるための重要なマーケティング手法です。
リードナーチャリングを行うか否かで成約率・成果発生率は大きく変わりますから、正しく理解して実施する必要があります。
そこで今回は
「リードナーチャリングという言葉は知っているけど、具体的な方法はよくわからない」
「自社で行っているリードナーチャリングの方法に疑問を感じている」
と疑問をお持ちの方に向けて、
- リードナーチャリングの内容
- 具体的な運用方法
- リードナーチャリングの具体的な事例
をわかりやすく解説します。
記事を最後までお読みいただければ、効果的なリードナーチャリングをしっかりと理解・実践できるようになります。
目次
リードナーチャリングとは見込み客を育てること
リードナーチャリングとは、獲得した顧客に段階的に接触・アプローチを重ね、商品やサービス、ブランド、企業への信頼感を高めるマーケティング手法です。
端的にいえば購買意欲をアップさせる手法ともいえますが、実際にはもう少し広く、顧客との関係性を深めることと捉えると良いでしょう。
リードナーチャリングを行って顧客の熱量を高めることで、成約につながるリードを増やすことができます。
セミナーや展示会、SEO施策の検索流入によって獲得した顧客をリードナーチャリングによって購買までのルートをつくることが主な運用です。
具体的な対策を行う時は、やみくもに顧客へ接してもかえって逆効果となります。
ニーズごとに顧客をカテゴライズして、ニーズの段階に応じた施策を考案、実施します。
したがって、リードナーチャリングを行うにあたってカスタマージャーニーマップも併せて考案する必要があるのです。正しいリードナーチャリングによって醸成された顧客は、スムーズに受注までのルートに乗ってくれるでしょう。
疎遠になった自社顧客へのリレーション
リードナーチャリングは新規顧客だけでなく、疎遠になった既存顧客にも効果的です。
以前、自社の商品やサービスを購入、検討していた顧客に対してメールや電話を使って再度接触を試みます。
新規顧客のリードナーチャリングと異なる点は、その後のニーズや疎遠となってしまった理由のヒアリングを行うことで、自社の商品やサービスについての課題が明らかになる点です。
何らかの理由で疎遠になってしまった顧客と新たに信頼関係を構築し、フィードバックや商品やサービスについての意見をヒアリングするのは難易度が高く、難しい内容ですが、得られるものは大きいでしょう。
リードナーチャリングの運用とフロー
ではここで、実際にリードナーチャリングを行うための準備と運用方法を解説します。
自社内のリードをすべて集める
まずは自社内にあるリード情報をすべて集約します。
セミナーで獲得した名刺、ウェビナーやWEBサイトで入手したメールアドレスなどさまざまな形で散在している情報をくまなく集めることが重要です。
企業によっては、情報を営業マンが個人で管理していたり部署ごとに管理していることもあり、同じ企業の異なる部署に別の人がアプローチしているため、情報が別々に管理されているケースもあります。
したがって、最初にバラバラのリードを一元化する必要があるのです。
リードのセグメント
顧客情報を一元化できたら集めた情報を精査、分類し、アプローチを行う顧客を選定します。
分類(セグメント)は、効率の良いアプローチには必須です。
主に、以下の情報を基に顧客の分類を行います。
- 性別
- 住所
- 年齢
- 職業
- 過去の取引履歴や直近の購買行動
セグメントを分けると「目的があって展示会へ来訪したのか、偶然通りがかりで立ち寄ったのか」といった顧客行動と目的が可視化され、アプローチするべきか否かを判断することができます。
また、顧客をセグメントしニーズを分析すれば、顧客それぞれに合わせてピンポイントな情報を届けることもできるのです。
顧客のニーズごとに分類する
顧客のセグメントが終わったら、顧客が商品やサービスに興味をもってから購入するまでのニーズの高まりを段階ごとに分類します。
段階ごとに分類しておくと、ニーズの程度に合わせた最適な対応をとることができ、ピンポイントなアプローチを行うことができるのです。
以下は、ニーズごとのステージを分けるために考案されたフレームワークで、考案順にAIDMAがもっとも古く、DECAXが最新となっています。
インターネットの普及以前と以後では、ステージ項目に変更が加えられており、
インターネットの普及により検索や、体験、共有が行動に加わっている点が特徴です。
ユーザーによりよい体験をしてもらった上で、その体験をいろいろな人へ共有してもらうという、インターネットの重要な活用ポイントが含まれています。
行動ステージ | |
AIDMA |
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AISAS |
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DECAX |
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カスタマージャーニーマップの作成
ニーズごとの分類が終わったらカスタマージャーニーマップを作成します。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が自社の商品やサービスを認知して、実際に購入するまでの行動や意識の変化を具現化し、目に見えてわかるよう可視化したものです。
顧客にセグメントごとのカスタマージャーニーを設定すると、認知や行動といった段階に併せて最適な施策を充てることができるようになります。
顧客の行動ステージごとの施策を考案
カスタマージャーニーが完成したら、ニーズの段階に応じてピンポイントで顧客の背中を押せるような施策を考案しましょう。
例えばイベントや展示会に来た顧客に対しては、自社の商品やサービスをもっと知ってもらうための自社の強みや、特徴などをまとめたコンテンツを届けます。
具体的な資料をダウンロードした顧客には、製品の具体的な特徴や無料デモキャンペーンなどのお知らせを送付します。
思った通りの行動につながらないこともありますが、その場合はSNSやバナー広告などを行い行動のためのきっかけをつくりましょう。
リードナーチャリングの必要性
最近になって、何故リードナーチャリングという言葉が聞かれるようになったのでしょうか。
リードナーチャリングが注目されている背景を確認しておきましょう。
顧客の選択肢と行動の多様化
企業の情報収集の方法は営業からのアプローチによるものか、こちらから営業へ連絡するかの2つでした。
最近ではインターネットの普及によって、情報収集の方法が拡大され、競合との比較検討が簡単になっています。
営業がアプローチした段階ですでに検討が完了して、社内での選考に入っていることも多々あります。
インターネットの普及とデジタル化に伴う行動変容に対応すべく、企業はできるだけ早めに顧客と接点を持ち、関係を強化し、自社の商品やサービスを検討の選択肢に入れてもらうよう、努力する必要があります。
購入までの時間が長くなっている
BtoB企業の場合、単価の高い商材が多いため意思決定に複数人が関わることが多く、購入が決定するまで時間がかかることが一般的でした。
インターネットの普及により、購入行動に「検索」「比較」「検討」という行動が加わり、受注までのプロセスがさらに長く、複雑になっています。
現時点で案件化が見えない顧客でも、継続的にコミュニケーションを取り続け、案件化したときにすぐ対応できるようにしておかなければいけません。
新規顧客の限界
顧客となる可能性がある企業は限られており、今後も数多くのリードを収集でき、新規開拓を無限に進めていくことができるとは限りません。
新規開拓と同じように獲得したリードや既存顧客への対応も重要です。
休眠顧客への接触を通して横のつながりによる紹介の獲得も考えられますので、営業活動はできるだけ幅広く行うようにしましょう。
リードナーチャリングのメリットと注意点
リードナーチャリングを行うことで得られるメリットと注意点をピックアップしました。
考えられるメリットは以下の3点です。
メリット:固定顧客の創出
リードナーチャリングやカスタマージャーニーマップに基づく施策がうまく機能すると、自社商品やサービスの固定顧客を創出することができます。
既存顧客からの定期的な発注があると、運営基盤の長期的な安定が見込まれ、大きなメリットとなるでしょう。
固定顧客が増えると、良い導入事例として新規顧客へのプレゼンの時に紹介することができ、新規受注の好循環を生むことができます。
既存顧客の常連化は、リードナーチャリングで得られる大きなメリットです。
メリット:受注率や売上が上がる
リードナーチャリングによって、入念な見込み顧客の醸成が行われていると、コンスタントに受注をあげることができます。
従来の営業方法では、決裁者とのコンタクトに時間がかかり、断られることも多く非効率な営業を強いられていました。
リードナーチャリングをうまく行えば、スムーズに担当者や決裁者にコンタクトすることができ、ピンポイントな提案を行うことも可能です。
適切なタイミングでピンポイントな提案を行うことができれば、おのずから受注率はアップすることでしょう。
メリット:非効率な新規開拓に時間を取られない
事業拡大を考える時に新規開拓は欠かせない仕事ですが、成熟した業界であれば新しくシェアを獲得するのは、かなりの労力が必要です。
全く接点のない状態からのコンタクトはかなり難しいでしょう。
リードナーチャリングをうまく機能させ、既存顧客を良好な関係を維持できれば、長期的な利益を見込むことができます。
接点のない新規顧客にアプローチするよりも、以前接点のあった既存顧客へアプローチしたほうが労力も少なく、受注の可能性も高いのです。
注意点
リードナーチャリングを行う上での注意点を2つピックアップしました。
リードジェネレーションもしっかり行う
当然ですが、リードジェネレーションの活動がなければリードナーチャリングの成果を得ることができません。
したがって、リードジェネレーションもしっかりと行う必要があります。
リードジェネレーションは主に、展示会やイベント、WEBサイト、セミナーやウェビナーで優良なリードを収集します。
リードジェネレーションの施策が優秀であれば、後のリードナーチャリングの精度も自然と良くなります。
連携の構築をしっかり行う
リードジェネレーションを行う部署とリードナーチャリング担当の部署、実際に顧客と接するフィールドセールスやインサイドセールスの部署との横断的連携を日々、綿密に行いましょう。
顧客の情報共有と、情報に対する意識の統一は効果的な営業活動を行うにおいてとても重要です。
例えば、セールスとマーケティングの部署でよいリードの認識が違うと、アプローチにずれが生じてしまいます。
週に1回程度は会議を行い、情報共有を行うのが望ましいです。
リードナーチャリングの手法
リードナーチャリングを進めるにあたって代表的な手法を5つピックアップしました。
メール
メールの配信によるアプローチは代表的なリードナーチャリングの手法で、多くの企業が活用しています。
顧客の興味、関心ごとに合わせた内容のメールを配信し、購入意欲を高めていきます。
メールアドレスだけあれば始められ、クリック率や開封率などの効果測定もしやすい、というメリットは重要なポイントです。
配信するメールマガジンの内容は、大きく2つに分けられます。
1. ステップメール
2. セグメントメール
ステップメールは無料会員登録や資料請求など、決まったアクションを実行した顧客に配信します。
顧客のとった行動に対応して送られるメールなので、顧客は理解されている感覚を持ってくれるかもしれません。
セグメントメールはセグメントごとに送られるメールで、顧客の属性に最適なメッセージやキャンペーンの案内などを送信します。
メールの文面はできるだけ目に留まりやすく、心に残る言葉選びのセンスが必要です。
WEBメディア
情報過多な現代社会で選ばれる企業となるには、WEBサイトを活用したコンテンツマーケティングを展開し、常に有益な情報を発信し続け、顧客との信頼関係を築いていく必要があります。
自社のファンとなってもらうべく、WEBサイトをうまく運用しましょう。
WEBサイトでは、「企業ビジョン」「製品の強み」「顧客に役立つ情報」などを中心に多岐にわたる情報を発信します。
記事や動画、ビジネスに役立つ資料の配布などさまざまな形式で情報を発信することも可能です。
質の高い有益な情報を発信し続けることで、SEOによる検索流入を見込むこともできるため、リードナーチャリングの施策としておろそかにできません。
セミナーや展示会
セミナーや展示会は顧客に直接、商品やサービスの案内ができるため効果的なリードナーチャリングを行うことができます。
最近では、リアル会場の展示会やセミナーだけでなく、オンラインで行われるウェビナーと展示会を組み合わせたイベントも見られるようになりました。
セミナーはメールやWEBサイトとの親和性が高いため、多くの企業がリードナーチャリングの一環として実施しています。
相手の反応を見ながら対話することで、購入意欲を高められる点はセミナーや展示会のメリットでしょう。
広告運用
WEB広告運用はさまざまな種類がありますが、その中でもWEBリターゲティング広告はサイトを離脱してしまった顧客を呼び戻すために、他社のWEBサイトを見ている時に自社の広告を出す仕組みです。
顧客の意識に定着しやすく、再訪の時のCV率を高める効果があります。
SNS
SNSは今や誰でもアカウントを持つことができ、時間や場所を選ばずに情報を得ることができる便利なツールとして広く世の中に浸透しています。
SNSをつかったリードナーチャリングは特にBtoCで大きな効果を発揮しますが、BtoBでも有効です。
Twitter、Instagram、Facebookなど、ユーザーが多いSNSを選び、自社のブランディングも考えつつうまく運用しましょう。
顧客のファン化には多少時間がかかりますので、気長に運用を継続する心構えが必要です。
電話
電話は相手の時間を奪うツールなので、積極的な利用は避けるべきですが、会話にて確実に伝わる事柄も多いため、限定的に使うべきでしょう。
突然電話をかけると相手に迷惑がかかってしまうので、相手の承諾を得てから連絡することが望ましいです。
リードナーチャリングとMAツールの連携
リードナーチャリングを効率的に行うためには、MAツールは必須のツールと言えるでしょう。
MAツールとリードナーチャリングの連携について、3つのポイントにて解説します。
リードの一元化
リードをMAツールに一元化することで、リードナーチャリングの施策をオートマチックに行うことができます。
MAツールで一元管理できる情報は以下の通りです。
1. セミナーや展示会で交換した名刺情報
2. WEBサイトでの資料請求やダウンロードの際に入力されたメールアドレスや個人名、企業名
3. 休眠顧客の情報
4. 取引中の既存顧客の情報
以上の情報があれば、顧客のセグメントからカスタマージャーニーマップの作成まで対応することができ、メールによる施策もオートマチックに配信できます。
情報をより具体的することで、精度の高いリードナーチャリングを行うことが可能です。
カスタマージャーニーマップとの連携
カスタマージャーニーマップとMAツールは深い関連性を持っており、セット運用によって最大の効果を発揮します。
カスタマージャーニーマップとは、見込み客が商材を知る前から購入に至るまでの「状況」、「行動」、「思考」を時系列で可視化したものですが、カスタマージャーニーマップの項目はそのままMAツールのシナリオ設定に当てはめることができます。
カスタマージャーニーマップをもとにしたMAツールのシナリオに基づいて、オートマチックなリードナーチャリングが可能となるのです。
オンライン上の行動の把握
MAツールはオンライン上のユーザーの行動を分析し、ニーズの度合ごとにスコアリングできる機能が備わっています。
サイトの来訪履歴やどのワードや項目でクリックしているか、など興味の範囲まで絞り込むことも可能です。
行動履歴の把握からニーズの度合を推測することで、ユーザーに適したメールや、WEB広告の施策を行うことができます。
メールの開封率など、メールマーケティングの反響を併せて確認することで、さらに確度の高いマーケティングを行うことが可能です。
リードナーチャリングの運用事例
BtoCとBtoBのリードナーチャリングの事例を2つ紹介します。
銀行の休眠顧客へリレーション再構築
投資信託や保険など金融商品の販売に力をいれている銀行では、疎遠となってしまった口座保有者に対して、あらたなリレーションシップを築くために定期的な連絡を行っています。
電話によるセグメント情報のヒアリングから、資産運用のニーズがある顧客を選別し、定期的な状況確認の連絡と心理的ハードルが低いNISA口座の開設を足がかりとして、投資信託や保険の購入へ結びつける施策が一定の成果を挙げています。
WEBからのアプローチが多いリードナーチャリングですが、アプローチする顧客層によっては電話が有効なケースも。
突然の電話を足がかりとして、あらたなリレーションを築くのは至難の業で、信用ビジネスを礎としている銀行ならではのアプローチ方法と言えるでしょう。
セミナーやイベントで獲得したリードへのアプローチ
クラウドやRPAのような大がかりなITソリューション商材を扱う場合、展示会で集客し、後にメールなどでアプローチを試みる方法が有効です。
展示会やセミナーに訪問するユーザーは、少なからずニーズや改善点を持っている可能性が高いため、ヒアリングによって正しくセグメントを行い、現状や背景を確認しなければいけません。
基本的なアプローチはメールで行いますが、反応がないケースが多いため、ここでも電話が有効なアプローチ手段となります。
電話の際のヒアリングポイントは、現状と改善点、改善点の背景、最終的な決裁者の確認です。
リードナーチャリングの役目は見込み客の醸成なので、十分なヒアリングに成功したらフィールドセールスへ連携し、引継ぎを行うのが基本ですが、電話で決済が可能な商材であれば、そのまま成約までこぎつけることもあります。
課題点と背景をより詳細にヒアリングできれば、セグメントがより鮮明になり受注の可能性を明確に判断することができるのです。
リードナーチャリングは企業の売上安定化に欠かせない
昨今の営業活動において、見込み客を醸成して受注に結びつけるリードナーチャリングは必須と言えます。
昔に比べてユーザーは数多くの選択肢を得ることになり、営業のアプローチを待つことなく、比較検討の段階まで話を進めることが可能になりました。
現状では、日々ユーザーと良好な関係を築き、要望があれば一番に声をかけて貰える位置を確保しておかなければ安定した受注が見込めなくなっています。
リードナーチャリングの運用には、リードジェネレーションが欠かせません。
各部署ごとにうまく連携して、適切なヒアリングを行い、新たなリレーションシップ構築を目指しましょう。