意外と知らないスーツの種類|失敗しない定番スタイルをスタイリストが解説
いきなりですが、皆さんはスーツを着るお仕事をされていますか?YESと答えた方は、何着くらいスーツを持っていますか?そして、その種類はどんなものがありますか?NOと答えた人も、1着は持っているのがスーツだと思います。
とはいえ、スーツといってもさまざまな種類があります。
スーツの種類は大きく分けるとその形で区別されます。実は、スタイルごとに歴史や意味が隠されていて、着た時のイメージが全く変わってきます。それぞれの特徴を理解すれば、より深みのある着こなしができるようになり、スーツを着るのがより楽しくなるのではないでしょうか。
この記事では基本的なスーツの種類をご紹介し、人気スタイリストで本も出版されている大山旬さんに、選び方のポイントについてアドバイスをいただきました。
メンズスタイリスト
人気スタイリスト。日本最大級のファッション学習サイト「メンズファッションスクール」主宰。これまでに著書は5冊出版。累計8万部を突破。読売新聞、朝日新聞、NHK、TBS、テレビ朝日、フジテレビなどメディア出演も多数。
シングルスーツとダブルスーツの違い
スーツの種類は大きく分けて、
《シングルスーツ》
《ダブルスーツ》
の2つに分類することができます。左がシングルスーツ、右がダブルスーツです。
違いは一目瞭然ですが、大きく異なるのは「ボタンの並び方」です。
《定番》シングルスーツ
定番ともいえるシングルスーツは、前のボタン配列が一列のデザインのものを指します。ピカピカの新入社員からベテランの役員さんまで、街で見かける9割のビジネスマンは、こちらのスタイルですね。
《高難度》ダブルスーツ
一方、重厚感の漂うダブルスーツは、前身頃のボタン配列が2列になっており、ボタン数は6つや4つなど様々なパターンがあります。シングルよりもフォーマルな印象が強く、体格の良い方に似合います。
ダブルのスーツは、難易度が相当高いアイテムです。一昔前、80年代にはダブルのスーツが大流行したようですが、最近はほとんど見かけませんよね。多くの方に縁がないデザインですが、一部のおしゃれ上級者の間では、タイトでスマートなシルエットのダブルスーツが流行っているとかいないとか…でも、デザイナー事務所など華やかな職場でない限り、周囲から浮いてしまう可能性大です。
ツーピースとスリーピースの違い
画像:aoki-style.com
スーツセットの構成の違いでも、2種類に分けることができます。
《定番》ツーピース
ジャケットとスラックスの2部で構成されている、いわゆる一般的なスーツスタイルになります。
こちらは詳しく説明する必要もないくらい、なじみがあると思います。
《クラッシック》スリーピース
ジャケットとスラックスに加え、ベスト(ジレ)を重ね着した3部構成のスーツスタイルです。非常にフォーマルな印象を与えます。
もともとイギリスで生まれた礼服「スーツ」は、スリーピースが主流スタイルでした。原則、それぞれのパーツ(ジャケット、ベスト、スラックス)は同じ素材(共地)にしましょう。
着こなしのマナーもあります。
まず、ジャケットのボタンはすべて外すのが基本です。留めるとしても第一ボタンだけにしましょう。ベストのボタンは逆に、一番下以外すべて留めるのが基本になります。覚えておくといいでしょう。
9割くらいの方がツーピースを着用していると思いますが、それで全然問題ないと思います。スリーピーススーツは、ちょっと堅めのお仕事をされている方や、ある程度の役職で貫録や信頼感を表現したい方が着ているイメージがあります。
トレンド的の面から見てみると、スリーピースは一部の間で流行ってきているといえます。正確に言えば、流行が再来しているんです。少し前まではカジュアルなスタイルが流行っていたのですが、ここ最近、一周回ってクラシックな着こなしに好印象を覚える人が増えているようです。
カジュアルスタイルのベスト(ジレ)について詳しく知りたい方は、「【メンズおすすめジレ】プロに教わる着こなし鉄板コーデ術」を参考にしてみてくだい。
ベント(背中の切れ込み)
ベントとは、スーツの裾に入っている切れ目のことです。動きやすさはもちろんのこと、後ろ姿の印象を決める重要な要素になります。
ベントは主に3種類です。写真左の「センターベント」と、写真右の「サイドベンツ」、そして切れ込みのない「ノーベント」があります。詳しく見ていきましょう。
《定番》センターベント
最もスタンダードなスタイルは、このセンターベントになります。もともと、乗馬の際に動きやすくするために考えられたデザインです。「馬乗り」と呼ばれたりもします。シングルスーツや、細身で着丈の短いスーツスタイルとの相性がよく、アメリカ系のスーツブランドに採用されることが多いです。軽快でスポーティーな印象があります。
《次点》サイドベンツ
センターベントの次に多くみられるのが、サイドベンツになります。腰に剣を差していた時代の名残といわれており、両サイドに2本切れ目が入っているのが特徴です。こちらは英国製のスーツに多く見られるスタイルです。「剣吊り」ともいいます。動きやすさでいえば、センターベントよりも優秀で、正統派のスーツと相性がいいです。威厳や風格を演出するなら、サイドベンツはおすすめですよ。
《礼服》ノーベント
その名のとおり、後ろ身頃に切れ目のないスタイルになります。ノーベントは基本的に冠婚葬祭で着るイメージのあるフォーマルなスーツ(礼服)に多いです。
【参考動画】ベントの種類
ベントの種類については、以下の動画を参考にしてください。
襟(ラペル)の形
最後に襟(ラペル)の形について、代表的な2種類をご紹介したいと思います。
《定番》ノッチド・ラペル
画像:tailor-fukuoka.com
「ノッチド(notched)」は「刻んだ」という意味で、上の写真のようにV字型の切り込みが入っています。シングルスーツで使用される定番の襟型になります。ラペルの幅とネクタイの幅を同じくらいにするときれいに着こなせます。
《華美》ピークド・ラペル
画像:u-note.me
「ピークド(peeked)」は「先の尖った」という意味です。下襟の先端が上に尖っています。日本では、「剣衿(けんえり)」と呼ばれることもあります。 もともとはタキシードなどのフォーマルスーツに使われていたデザインです。ダブルスーツに多く、ドレッシーな印象があります。尖り過ぎが気になる方は、「セミピークド」という尖りを少し抑えた種類もありますので、チェックしてみてください。
スーツの種類まとめ
今回はスーツの種類についてご紹介しました。
それぞれが持っている印象や雰囲気を理解し、TPOにあったスタイルを選べば、あなた自身の印象もグッと良くなり、おしゃれの幅も拡がるのではないかと思います。
あなたのスーツスタイルが、より洗練されることを願っています。