注文住宅を建てることを決断した時、間取りの中に和室をつくるか、つくらないかで悩む方も多いのではないかと思います。現代の生活様式では和室が必須という考え方も少なくなり、最近のマンションなどでは、最初から和室を設けていないものも多くみられます。
では、和室をつくる際のメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?それぞれ詳しくご紹介していきます。また、和室の使い道や注文住宅における和室採用率なども合わせて紹介していくので、ぜひお役立てください。
注文住宅に和室を設けるメリット
和室は、日本の伝統と美意識を取り入れた特別な空間です。和室を導入することで、畳の香りや木のぬくもり、和の美しさを楽しむことができます。また、和室の特性を活かして様々な使い方をすることで、より自由度の高い住宅空間を創り上げることができるでしょう。
では、和室をつくった場合のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?これから解説していきます。
メリット①:日本の伝統と文化の継承
和室は日本の伝統的な建築スタイルであり、和室を取り入れることで日本の文化や美意識を表現することができます。和室は畳や縁側、襖(ふすま)などの要素が特徴であり、日本の建築文化を堪能することができます。
和室の特徴といえばやはり「畳」です。畳は”い草”から作られており、“い草”の香りにはリラックス効果もあるといわれています。畳の上でくつろぎながら茶を楽しむ、座椅子や座布団でくつろぐなど、和室特有のくつろぎを味わうことができます。
メリット②:調湿効果がある
和室には調湿効果があるというメリットがあります。畳は自然素材でできており、湿度の変化に敏感に反応します。湿度が高いときには湿気を吸収し、乾燥しているときには水分を放出することで、室内の湿度を調節します。このため、畳を敷いた和室は湿度の均一化を促し、適切な湿度を保つ効果があります。
さらに、和室に使用される障子や襖などの自然素材は通気性に優れており、湿度の調節に貢献します。障子や襖の紙、木材などは湿気を吸収し、適度な湿度を保つことが可能です。これにより、室内の湿度を一定に保ち、ムレやカビの発生を抑える効果があります。
メリット③:多機能なスペースになる
和室は多機能なスペースとして利用することができます。寝室や客室として使用するだけでなく、書斎や和風のリビングスペース、和室を活用した多目的スペースなど、自由な発想で様々な使い方が可能です。
また、小さな子供がいる家庭も和室があれば安心です。ハイハイやよちよち歩きの小さなお子様が転んでしまっても、和室なら畳のやわらかさで怪我をしにくいでしょう。おむつ替えやお昼寝の場所としても使えます。
メリット④:和のリラックス空間
和室は落ち着いた雰囲気と自然素材を使用しているため、リラックスした空間を提供します。畳の上でくつろぎながら茶を楽しむ、座椅子や座布団でくつろぐなど、和室特有のくつろぎを味わうことができます。
和室があるだけで、日本の伝統行事も行いやすいです。お正月飾りやお雛様、こどもの日の兜など、和室は季節のアイテムを飾る場所にピッタリ。古き良き日本の文化を楽しみたいなら、和のリラックス空間は必要でしょう。
メリット⑤:空間を広く使える
和室は床に家具を配置することなく、空間を広く使うことができます。畳の上で様々な活動を行うことができるため、自由な動きや広がりを感じることができます。
たとえば洗濯物をたたんだり、アイロンをかけたり、といった家事をする際、フローリングの床に洗濯ものを直に置いてたたむことには少し抵抗があるかもしれませんが、畳の上ならばそういったこともありません。また、座るのにもやわらかな畳の上ならば、足も痛くなりにくく苦にならないでしょう。
注文住宅に和室を設けるデメリット
では、和室をつくった場合のデメリットにはなにがあるのでしょう。悔いを残さず注文住宅で和室をつくるためには、メリットだけでなくデメリットにも目を通しておくことが重要です。
デメリット①:メンテナンスが大変
畳は年数がたつと日焼けで変色してしまったり、表面が擦り切れてしまったりするので数年たつと表替えが必要になります。さらに10年、15年たつと新調する必要もあります。また、ふすまや障子も経年劣化で破れや色褪せなどが出てくるので、畳と同じく張替えが必要になっていきます。
畳のメンテナンスは、美しさと耐久性を保つために重要です。定期的なケアと適切な管理を行うことで、長く快適に畳を使用することができます。また、畳職人に相談や定期的な点検を依頼することもおすすめです。
デメリット②:耐久性が低い
和室の床や壁に使用される素材は、他の素材に比べて耐久性が低い場合があります。畳は比較的繊細で、傷や汚れがつきやすいです。また、襖や障子も破れやすいため、取り扱いには注意が必要でしょう。
畳はやわらかいことがメリットにもデメリットにもなります。重い家具を配置するとその重量で畳がへこみ、あとが残ってしまいます。また、模様替えなどで長年置いていた家具を移動させると、日焼けしている部分とそうでない部分との色の差が目立ってしまうこともあるでしょう。
デメリット③:衛生面が気になる
畳は湿気の多い状態が続くとカビが生えやすくなるため、定期的に換気をすることが必要となります。また、畳の目に細かいゴミが入り込んでしまうと、それが原因でダニなどの餌となってしまい、温床になってしまいかねません。掃き掃除や拭き掃除など、こまめに汚れを取りのぞくことが大切です。
和室はくつろぎの空間として使われることもありますが、食事やペットの利用には注意が必要です。食事をする場合はテーブルを使用し、こぼれたり汚れたりしないように注意しましょう。万が一飲み物などをこぼしてしまった場合、完全にふき取ることが難しいのでカビの原因になりやすいです。
和室のさまざまな使い道
和室は日本の伝統的な要素を取り入れた特別な空間です。その特有の雰囲気や趣味に合わせた活用方法を考え、自分自身や家族のくつろぎや楽しみの場として利用してみてください。ここでは、和室の活用方法の一例をご紹介します。
座敷
和室は座敷として使われることが一般的です。畳の上でくつろぎながら、家族や友人との会話や食事を楽しむことができます。座椅子や座布団を配置すれば、伝統的で和やかな雰囲気を作り出すことができるでしょう。
座敷は広々とした空間があり、子供たちの遊び場としても活用できます。座布団やマットを敷いておもちゃを広げたり、絵本を読んだりすることで、子供たちはのびのびとした遊びができます。
書斎や勉強スペース
和室の静かな雰囲気を活かして、書斎や勉強スペースとして利用することができます。畳の上に机や椅子を配置し、集中して読書や仕事に取り組むことができます。
もし仕事や勉強に疲れた場合、落ち着いた雰囲気のある和室ならその場で休息やリラックスの場としても活用できます。座布団や敷物を敷いて横になったりすることで、疲れを癒すことが可能。和室特有のい草の香りが、よりあなたを癒してくれるのではないでしょうか
寝室
和室は落ち着いた雰囲気があり、寝室として活用することもできます。畳の上に布団を敷いて寝ることで、和の趣を感じながら心地よい睡眠環境を作り出すことが可能。和室は日本独特の風情を持っており、木や和紙の素材感が温もりと安らぎを与えます。
和室の床に布団を敷くと、畳が柔らかく体にフィットするため快適な寝心地を提供します。また、和室は通気性がよく湿度の調節もしやすいため、良質な睡眠環境を作ることができるでしょう。ベッドフレームやマットレスを使用する必要がないので、家具のコストやスペースの節約になります。
茶室
和室を茶室として使うのも良いでしょう。茶室は日本の伝統的な文化であり、和室を茶室として活用することで茶道や日本茶の文化を学び、体験することができます。茶室は静寂な空間なので、外の騒音を遮断して心を落ち着かせる効果があります。茶室の特別な造りや内装により集中力を高め、リラックスした状態で茶道のお点前やお茶会を楽しむことが可能です。
自然の風景と調和するようなに和室を設計しておけば、茶室として活用する際に趣を感じられるでしょう。窓からの庭園の景色や自然光の射し込む光景が、茶室の雰囲気を一層引き立てます。自然との調和を感じながら、茶道の世界に浸れます。
趣味部屋
和室はその特有の雰囲気や床の柔らかさを活かして、趣味や趣向に合わせた利用も可能です。たとえば、和室は美しい自然光や風景が広がるため、お花や草花の活け花を楽しむのに適しているでしょう。花材を選び和室に飾ることで、自然の美しさを感じながら花を楽しむことができます。
他にも、和室なら座卓や畳の上で書道や習字を行うことができます。筆を握りながら和室の静寂な空間で文字を書くことは、集中力を高め、芸術的な表現を追求する良い機会となるでしょう。和室の静寂な空間は、音楽鑑賞や楽器演奏にも最適。特に、和楽器や琴などの伝統楽器を演奏する場合、和室の独特の響きや雰囲気が音楽の表現を一層引き立てます。
注文住宅で和室を採用している割合
注文住宅で和室を採用している人の割合は、年々減少しています。暮らしていくなら洋室だけでも問題はありませんし、時代の移り変わりによって価値観の変化もあるのでしょう。
近年の住宅のデザインや生活スタイルの多様化により、洋室や洋風のインテリアが主流となっています。そのため、和室を採用する割合が減少。実際、住宅に畳の部屋がないと回答した人の割合は2010年時点で18.8%、2016年時点では25.3%となっています。
しかし、一部の地域や特定の需要層では、和室を好む人や和室のある住宅を求める人も存在します。また、伝統的な日本の文化や美意識を大切にする方や、茶道や書道などの伝統的な趣味に興味を持つ方にとって、和室は魅力的な要素となります。
では、年代が上がるほど和室の採用率も高くなるのかというと、そういうわけではありません。意外にも、若い世代のほうが和室を採用している割合は高くなっています。
総じて言えることは、和室の採用は個人の好みやニーズによるものであり、その割合は多様であるということです。和室を採用するかどうかは自身のライフスタイルや文化への関心、建物のデザインやコンセプトなどを考慮して判断すると良いでしょう。
注文住宅に和室を設ける際の費用
和室の費用は、様々な要素によって異なります。ですが、シンプルな造りの和室であればフローリングと大きな費用の差はないでしょう。住宅の一部分を畳敷きにして和室の雰囲気を演出する程度の畳コーナーであれば、比較的費用を抑えて設けられます。
逆に言えば、素材や造りにこだわればこだわるほど費用は嵩みます。和室に用いられる畳や障子は、物によって価格が大きく変動。予算にあった素材を選択することも重要となるでしょう。
畳の相場は、1畳あたりの5,000円~15,000円程度です。質の高い国内産の畳であれば、もっと価格の高いものも存在します。また、「緑あり畳」と「琉球畳(縁なし畳)」のどちらの畳を選ぶかによっても費用は変わるでしょう。障子の相場は、1枚辺り15,000円~40,000円程度。畳や障子はなど質ももちろん大切ですが、価格と相談して決めるようにしましょう。
ここに施工費がプラスされることも忘れてはいけません。和室を設けるための費用を正確に把握するためには、ハウスメーカーや建築会社との相談や見積もりを行うのが一番でしょう。
注文住宅に和室を設ける際の注意点
新築の注文住宅に和室をつくることを決めたときに、いくつか注意しておきたいことがあります。ここでは和室を作る際の注意点を3点ご紹介していくので、悔いの残らない素敵な和室を実現するために確認しておきましょう。
注意点①:利用目的を明確にする
和室の主な利用目的をはっきり決めておくことが重要です。和室の使い方を検討し、家族のライフスタイルや好みに合わせて適切な使い方を考えましょう。和室は寝室、書斎、茶室など様々な目的に活用できます。
仏間として使うことを考えているなら、玄関に近い場所に和室を設けるほうが、法事などの際にお寺の方や訪れる人を招き入れやすいでしょう。 親せきや友人が来たときに宿泊できるような客間として使いたいのなら、自分たちの寝室と離れた位置に設けるほうがお互いに気兼ねしなくてすむかもしれません。
注意点②:湿気対策を行う
和室の湿気対策は、快適な居住空間を維持するために重要です。適切な換気や畳の管理、防湿対策、防カビ対策を行うことで、湿気による不快感やカビの発生を防ぎ、清潔で快適な和室を保つことができます。
窓を開けて自然な風を取り入れたり換気扇を利用したりすることで、湿気を効果的に排出することができます。特に湿気の多い梅雨時や湿度の高い場所では、こまめな換気が重要になります。湿気の多い時期には、畳を日光に当てて乾燥させ、除湿機を使用しましょう。そうすることで、畳の湿気を防ぐことができます。
注意点③:配置と比率を検討する
和室を配置する場所は慎重に選ぶ必要があります。和室は通常、静かで落ち着いた場所に配置されることが多いです。家族やゲストがくつろげるような環境を考慮し、適切な配置を選びましょう。
また、和室はサイズと比率も重要です。和室が他の部屋と調和し、バランスの取れた空間になるように計画しましょう。和室の広さや畳の数を決める時は、あらかじめ家族の人数や使用目的に合わせて検討すると住んでからの使い勝手がよく便利です。
SNSで見つけたおしゃれな和室デザイン
和室と言えば畳や障子、襖などのような昔ながらの日本らしい部屋を想像する方が多いでしょう。しかし最近では、和洋折衷風のデザインや和風モダンといったデザインもたくさん存在しています。
ここでは、SNSで見つけたマネしたくなるような魅力的な和室のデザインをご紹介していきます。注文住宅に和室を設けたいけどデザインがなかなか決められないのなら、一度参考までに見てみてください。また、ここで紹介している投稿以外にもさまざまな実例がSNSには掲載されていました。気になる方がご自身でも検索してみましょう。
デザイン例①:グレージュの畳が可愛らしい和室
デザイン例②:茶道を楽しめる丸窓付きの和室
デザイン例③:おもてなしに配慮した間取り
デザイン例④:こだわりの詰まった上品な和室
デザイン例⑤:モダンな住宅に馴染む琉球畳
デザイン例⑥:リビングと繋がるくつろぎ和室
デザイン例⑦:斬新でインパクトのある黒畳
デザイン例⑧:襖を可愛くアレンジ
デザイン例⑨:インディゴブルーの縁なし畳
デザイン例⑩:ベンガラ漆喰の壁が映える和室
まとめ
注文住宅で和室をつくることにはメリットとデメリット、どちらも考えられます。和室をつくろうと考えるのならば、そのメリットやデメリットを考え、間取りや大きさ、機能などを吟味したうえで計画することです。
現代では、和室を設けていない住宅も多くありますが、用途によっては和室のほうがよいこともあります。その家ごとの暮らし方によって和室があったほうが住みやすい場合、そうでない場合があるでしょう。
一生の買い物である注文住宅で後悔しないためにも、専門家の意見にも耳を傾けながら細部まできちんとこだわりをもつことが大切です。