「い抜き言葉」とは何か、説明できますか?

い抜き言葉は会話の中では自然に聞こえる表現ですが、文章で使うと途端に不自然になってしまいます。

知らず知らずのうちにい抜き言葉を使ってしまわないように、しっかり理解しておきましょう。

とくにWebライターを始めとして文章の作成を仕事にしている方は、い抜き言葉の意味や効果、使いどころなどを正しくしっておかなければ、仕事の信頼に関わることもあります。

そこで今回は「い抜き言葉」を詳しく解説し、使用例を多く用意しました。

  • い抜き言葉とは
  • い抜き言葉が適している場面
  • い抜き言葉を避けるべき場面
  • い抜き言葉の例
  • い抜き言葉の他に多い「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」

記事を最後までお読みいただければ「い抜き言葉」を理解し、不自由なく使えるようになります。

Webライターを始めとした文章を書くすべての人にとって、文章力の底上げとなるでしょう。

い抜き言葉とは?

い抜き言葉とは、本来「い」を入れるべき場所で「い」を省いて使われる言葉のことを指します。

たとえば「話している」という意味で、「話してる」と使われることなどが挙げられます。

私たちは日常生活のさまざまなシーンで、自然にい抜き言葉を読んだり聞いたりしているのです。

とはいえ、い抜き言葉は日本語の乱れであり、正規の文法表現ではありません。

Webライターやブロガーなど、文章を使って人に物事を伝える職業の方は、い抜き言葉の例やふさわしいシーン・ふさわしくないシーンをしっかりと理解し区別できるようにしましょう。

い抜き言葉は口語的な表現→くだけた印象に

い抜き言葉の使用は、会話の中では自然に感じますが、文章にするとくだけた印象となりすぎる傾向にあります。

先ほど挙げた「話す」の例で考えてみましょう。

口頭で「花子さんが話して(い)た」と伝えるときは、日本語の乱れに対する違和感があまりありませんよね。

しかし、作文などのきちんとした文面上では「花子さんが話していた」と書かなければなりません。

たったひとつの「い」が入るか・入らないかの違いですが、相手に与える印象は大きく変化するのです。

い抜き言葉が適している場面

カジュアルな会話の中でい抜き言葉を使うのは、特別に不自然ではありません。

たとえば、い抜き言葉は以下のように自然に使うことができます。

  • 「太郎君はどこ?」
  • 「裏庭で野球して(い)るよ!」
  •  「さむっ(い)」
  • 「奥の部屋はストーブがついて(い)るんだよね」
  • 「なんだか、きもちわる(い)」
  • 「大丈夫?きちんと薬のんで(い)る?」

「い」を抜いて会話文を短くすると、テンポよく情報共有ができますね。

また、SNSやチャットなどの親しい友人とのコミュニケーションでも、い抜き言葉が使われることは多くあります。

では、インタビューやセリフを扱うシーンではどうでしょうか。

載せるメディア・取材対象者・ターゲット層などによって異なりますが、無理にい抜き言葉を直そうとすると不自然になるケースもあります。

女子大学生向けのWeb版ファッション誌に載せるための対談として、インフルエンサーが集まっているシーンを想像してみてください。

い抜き言葉で会話する女子大生

【1.い抜き言葉を使った生の会話】

A:「Bちゃん、最近表情とか雰囲気とか変わったよね」

B:「前は夜遅くまで起きてたけど、最近は早く寝るようにしてるんだ」

A:「健康的になったな~って思ってる」

B:「そういえば、笑ってる時間も増えたかも!」

A:「睡眠って身体にも心にとっても大事なんだね」

【2.い抜き言葉を直した会話】

A:「Bちゃん、最近表情とか雰囲気とか変わったよね」

B:「前は夜遅くまで起きてたけど、最近は早く寝るようにしてるんだ」

A:「健康的になったな~って思ってる」

B:「そういえば、笑ってる時間も増えたかも!」

A:「睡眠って身体にも心にとっても大事なんだね」

読者の女子大学生は、AさんとBさんの左右の対談記事を読んで、どちらに親しみを感じるでしょうか?

1の文章は、AさんBさんがまるで目の前で話しているかのようなリアリティを感じさせます。

それに対し、い抜き言葉を直した2の文章は、「セリフをしゃべらされている」ような雰囲気を感じさせるのではないでしょうか。

会話のテンポも悪く、間延びしています。

インタビューやセリフを扱う記事では、い抜き言葉を無理に直す必要はありません。

新人Webライターなどが文体に迷ったときは、メディアのトーンを確認したり、編集者に直接質問したりするとスムーズに解決できるでしょう。

い抜き言葉を避けるべき場面

反対に、い抜き言葉を使ってはいけないシーンもあります。

取引先や上司へのメールなど、フォーマルな場の文章では、い抜き言葉を避けるべきです。

以下のようなメール文を送っている方は要注意です。い抜き言葉を使って、先方からの印象を下げてしまっている可能性があります。

  • 「いつもお世話になってます」
  • 「感謝してます」
  • 「急いで対応してます」

先述した通り、い抜き言葉はカジュアルなシーンでのみ使用できます。

仕事先の相手はプライベートのお友達とは異なるので、相手を敬い、丁寧な日本語表現を心がけましょう。

ちょっと小話:い抜き言葉を使う?使わない?

フランクなコミュニケーションを求める特殊なIT企業や、個人で運営している法人企業とのやりとりでは、先方がい抜き言葉を使ってメールやチャットを送信してくることもあります。

ビジネスシーンでのい抜き言葉の例

そのような場合は指摘せずに、そっと受け流しておきましょう。

また、相手とのテンションを合わせるために、こちら側もあえてい抜き言葉を使うこともひとつの手段です。

相手にしぐさや文体を合わせて親しみを感じてもらう方法を、心理学用語で「ミラー効果(同調効果)」といいます。

シーンによっては、「い抜き言葉を絶対に使ってはいけない」と頑固に決めつけずに、柔軟に対応していくことも大切です。

い抜き言葉を使うときは自覚して取り入れるように気をつけましょう。

い抜き言葉の例

い抜き言葉を意識して使い分けるためには、い抜き言葉の例文をたくさん知っておく必要があります。

練習問題として、以下の文章をい抜き言葉から正しい日本語に修正してみてください。

【練習問題1】

  1. 私はいつもジャージを着てる
  2. 健太は食パンをほおばってます
  3. 知ってる人がいない
  4. 山田さんは図書室にいると思ってた
  5. 全国大会に向けて準備してるところです
  6. 困ってる人を助けたい
  7. 来年に向けて頑張ってきましょう
  8. 足が痛くて立ってられなかった
  9. わかってるのに動けないのが悩みだ
  10. 理解度が上がってきてる気がします

正しい表現にすると

では、正解をチェックしていきましょう。

【練習問題1・解答】

  1. 私はいつもジャージを着ている
  2. 健太は食パンをほおばっています
  3. 知っている人がいない
  4. 山田さんは図書室にいると思っていた
  5. 全国大会に向けて準備しているところです
  6. 困っている人を助けたい
  7. 来年に向けて頑張っていきましょう
  8. 足が痛くて立っていられなかった
  9. わかっているのに動けないのが悩みだ
  10. 理解度が上がってきている気がします

とくに「~して(い)る」と「~(い)られる」は間違えやすいです。

文章を書いたときは、印刷や納品をする前によく確認してください。

ビジネスシーンでのい抜き言葉の例

とくに厳しくチェックすべきなのが、仕事などの公の場で使う言葉す。

仕事への信用度にも影響するので、正しい日本語を使うよう注意しましょう。

練習問題として、以下の文章をい抜き言葉から正しい日本語に修正してみてください。

【練習問題2】

  1. いつもお世話になってます
  2. 課長は第二会議室で話してます
  3. 売り上げがアップしてます
  4. ご健勝を心から願ってます
  5. ひとつずつ覚えていきたいと思ってます
  6. 本サービスはすでに終了してます
  7. 業界の動向をチェックしてます

正しい表現にすると

では、正解をチェックしていきましょう。

【練習問題2・解答】

  1. いつもお世話になっています
  2. 課長は第二会議室で話しています
  3. 売り上げがアップしています
  4. ご健勝を心から願っています
  5. ひとつずつ覚えていきたいと思っています
  6. 本サービスはすでに終了しています
  7. 業界の動向をチェックしています

今回は、謙譲語・尊敬語の表現は省いています。

ただ1つの「い」をつけるだけでも、修正前より丁寧な印象になりますね。

い抜き言葉の他に多い「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」

い抜き言葉の他にも、ら抜き言葉・さ入れ言葉という日本語の乱れがあります。

あわせて覚えておくと、正しい日本語の理解に役立つでしょう。

ら抜き言葉

ら抜き言葉とは、ら抜き言葉とは、本来「ら」を入れるべきなのに、「ら」を省いて使われる言葉のことです。

「可能である」「できる」という意味を伝えるときに、「ら」を抜いてしまうことが多く見受けられます。

たとえば「食べられる」という可能動詞を「食べれる」と略してしまうことなどが挙げられます。

文化庁によると、ら抜き言葉は昭和初期から現れたとのことです。

い抜き言葉と同じく、話し言葉としては現代で使われていても、フォーマルな場面や紙面上で使う言葉としては印象がよくありません。

さ入れ言葉

さ入れ言葉とは、本来「さ」がいらないポイントで「さ」を付けたして使われる言葉のことをいいます。

さ入れ言葉は、改まったシーンで誤用されるケースが多いのが特徴です。

たとえば、「やらせていただく」を「やらさせていただく」と使ってしまうことなどが挙げられます。

一見丁寧な表現に感じる方もいるかもしれませんが、間延びした誤った文法です。

「~ていただく」「~もらう」という言葉には、「さ」を使うか使わないかをしっかりと確認しましょう。

文字一つで印象は大幅に変わる

成長

い抜き言葉・ら抜き言葉・さ入れ言葉をはじめとして、文章が少し変わるだけで相手に与える印象は大きく変わります。

適切な言葉選びができるようになることは、伝えたい情報を正しく伝え、相手に敬意を払うことにもつながるのです。

ただし、ら抜き言葉が昭和初期から話し言葉として浸透してきたように、言葉は時代とともに変化します。

必ずしも正しい表現だけにとらわれる必要はありません。

正しい表現を知っていてあえて違った言葉を選ぶのと、正しい表現を知らずに誤用するのではWebライターとしての力量において大きな差があります。

現代に生きるWebライターは、より柔軟な理解力と対応力が求められているといえるでしょう。

まとめ

今回は、い抜き言葉の定義・例文を中心に紹介しました。

ポイントをまとめると、以下の通りです。

  • い抜き言葉とは、「~して(い)る」などの「い」を抜いた表現のこと。日本語の乱れのひとつ。
  • い抜き言葉は、カジュアルな会話やチャットでは使ってもよいが、フォーマルな仕事のメールなどでは避けるべきである。
  • い抜き言葉の他に、ら抜き言葉やさ入れ言葉にも注意が必要。

Webライターとして、日本語を扱う人として、場面に合わせた言葉を使うよう心がけましょう。

参考:

文化庁ホームページ「言葉遣いに関すること

NHK高校講座「ベーシック国語2学期第20回

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ナカリナ

SEO・インタビューライター。大学では現代カルチャー、俳優養成所では芝居を学ぶ。在学中から企業イベント、小・大劇場の公演(ダンス・演劇)に出演。また、舞台演出部として国内ツアーに参加。いろいろな業界の方との交流で刺激を受け、現在は多ジャンルのライターとして活動中!●WordPressブログ運営中:「文化と芸術!saitasaita」(https://saita-saita.com/